冷蔵庫に付けられた鍵

日常的に使う鍵と言えば、私の頭に浮かぶのは自宅玄関、車、バイク、自転車、職場のロッカーくらいのものです。
しかし国が変わればそれぞれの「鍵事情」も変わるようです。
以前、海外で暮らしている友人の自宅に行った時に初めて見て驚いたのが冷蔵庫にある鍵穴です。
消費者が部品を買って自分で取り付ける物ではなく、家電メーカーが仕様のひとつとして最初から付けて販売しているものです。
友人は鍵を付けないまま使用しているとのことでしたが、その国では冷蔵庫が鍵付きであるのは決してめずらしいことではないのだそうです。
それを見た時に私が最初に思ったのは、親が見ていない時に小さな子どもが勝手に冷蔵庫を開けて中の物を好きなだけ食べたり飲んだりしないようにするためだろうということです。
もしくは彼らが冷凍庫の氷などに触れてしまい手が張り付いて取れなくなるなどの事故防止ではとも思いました。
日本では、防止策として冷蔵庫の扉に簡単に取り付けられるドアストッパーのようなものが販売されています。
友人に理由を尋ねてみたところ、もちろん冷蔵庫の中身を好き勝手に食べさせないためや事故防止の目的もあるようですが、日本で暮らしている私にはなかなか思いつかない理由をもう一つ教えてくれました。
それは、盗難防止です。
友人宅は不特定多数の人が出入りするような環境になく、セキュリティがしっかりしているためわざわざ冷蔵庫にまで気にかける必要もないのですが、設置場所によっては冷蔵庫の中身が知らない間に盗まれているというケースも考えられるのだそうです。
日本でも、レストランや百貨店などの高級食材や高級ワインを保管している業務用冷蔵庫であればあり得る話ですが、まさか一般家庭向けにこのような仕様になっているとは驚きました。
自衛のためとは言え、ここまでしなくてはならないのかと少し悲しい気分になりました。
同時に日本人がどれだけセキュリティに鈍感であるかということを教えられたような気もします。